ノタヌキモ

学名:Utricularia aurea  

ノタヌキモ(野狸藻) タヌキモ科タヌキモ属

新潟県以南の本州・四国・九州・沖縄の貧栄養~中栄養な湖沼や溜池・水路などに生育する1年生または多年生の浮遊植物。

茎はよく分枝し、長いものでは1.5mに達する。葉は基部から3個の枝に分かれ、外形は卵状披針形で長さ3-8cm、2-3回立体的に羽状に枝分かれし、長さ2-2.5mmの捕虫嚢を、各裂片の基部のほか、葉片上に多数付ける。冬期には他種のような殖芽は形成せず、枯死するが、花は秋遅くまで開花し、自家受粉によって結実して、種子で越冬する。花茎は水中茎よりも太く、長さ7-20cmで、鱗片葉はなく、花茎上方に3-11個の唇形花を付ける。花冠は径6-7mm、淡黄色で、上唇は立ち、下唇は半円形に大きく開出する。距は円錐状鈍頭で屈折し、下唇の下面とともに毛があり、下唇と同長かやや短い。花後、花柄は20mmほどに伸て肥大し、先端に向かうにつれて太く、蒴果は下向きになり、萼は5-9mmに伸びて、やや厚味を増し、花柱も宿存して肥大する。
花期は7-11月。
蒴果は径4~7mmの球形で、内部は1室からなり、胎座上に種子が嵌め込み状に付く。種子は数が少ないと扁平円形、種子数が多い場合には、互いに密着して5-6稜ある円盤状となり、径0.8-1.3mm。

※ 名は、水中に浮んでいる形全体を狸のしっ ぽに見立てことから。
 本種は日本ではふつう1年草で殖芽を形成しないが、湧水に涵養される場所ではそのまま越冬し、亜熱帯地域では多年草になる。
 生育環境の減少により、環境省レッドリスト絶滅危惧II類 (VU)に指定されている。
 捕虫嚢の袋は、普段は萎んでいて、口近くにある触覚にミジンコなどの小動物が触れると、水と一緒に吸い込む。

 [近縁種]
  タヌキモ  :Utricularia vulgaris var. japonica (The Plant ListではUtricularia vulgarisのシノニム)
         イヌタヌキモとオオタヌキモのF1雑種で、殖芽が球形、殖芽葉には明瞭な中軸があり、花茎は中空。
  オオタヌキモ:Utricularia vulgaris subsp. macrorhiza
         大型で、殖芽は球形、葉は分岐が多数で、多くの捕虫嚢が付く。北海道・東北に分布。
  イヌタヌキモ:Utricularia australis
         葉が基部から2岐し更に互生状に何回か分枝する。捕虫嚢はふつう多い。花茎は中空。
         秋以降、茶褐色紡錘形の殖芽を形成する。
  フサタヌキモ:Utricularia dimorphantha
         葉が細裂してやわらかく、殖芽は球形、花は淡黄色、捕虫嚢は少数しか付かない。
         やや富栄養な溜池に稀。
  ヒメタヌキモ:Utricularia minor
         葉は疎らに付いて小さく、裂片は2叉分枝し、茎や枝先端の新芽はシダの新芽のように巻く。
         花は稀で淡黄色~白色~淡紅色。殖芽は球形で7mm以下。
  コタヌキモ :Utricularia intermedia
         葉は小型で扇状で重なり合ってつき、花は黄色。殖芽は球~楕円形で、2-5mm。西日本ではごく稀。


主写真撮影日:2018-11-08   撮影地:神奈川県横須賀市 観音崎博物館
撮影者:MOMO