イヌビワ

学名:Ficus erecta  

イヌビワ(犬枇杷)[別名:イタビ] クワ科イチジク属

関東地方以西の本州・四国・九州・沖縄の山地や丘陵に生育する、落葉小高木。

樹高は3-5m。樹皮は灰褐色。本年枝は無毛。葉は互生。葉身は長さ8-20cm、幅3-8cmの卵状楕円形。先は急に尖り、基部は円形または心形で、全縁。両面とも無毛。葉柄は長さ2-5cm、殆ど無毛。托葉は長さ8-12mmの狭披針形で先は尖り、落ちやすい。雌雄別株。花期は春。花嚢は長さ8-10mmの球形で、葉腋に1個ずつ付く。雄と雌の花嚢は同形。花嚢の内側には小さな花が多数付く。雄花嚢には雄花と虫えい花が混在し、雌花嚢には雌花のみがある。雄花には花被片が5個と雄蕊が2個ある。雌花には花被片5個と雌蕊が1個あり、花柱は長い。虫えい花の花柱は短く、柱頭は皿状。花嚢の柄の上部には長さ約1mmの半円形の下部総苞葉が3個付く。
花期:4-5月。
果実(果嚢)は、径約2cmの球形。10-11月黒紫色に熟す。痩果は径約1.3mmの球形。

※ 名は、果実がビワに似ているが味は劣るというところから。
 雌果嚢は食べられるが、雄花嚢は固くて食べられない。
 花嚢には、イチジクコバチ科のイヌビワコバチが寄生する。雄花序の奥側には雌花に似た「虫えい花」があり、これにハチが産卵する。幼虫は虫えい花の子房が成熟して果実状になるとそれを食べ、成虫になる。初夏になると雌成虫は外に出るが、雄成虫は花序の中で雌成虫と交尾するだけで一生を終える。雌成虫は雄花序の出口付近にある雄花から花粉を受け、初夏に開花する雌花序に入った際には授粉をするが、雌花嚢では子孫を残せず、雄花序に入ったものだけが産卵し、翌年春にこれが幼虫になる。

 [品種・変種]
  ホソバイヌビワ:Ficus erecta f. sieboldii
          葉幅が1.5-3cmと細く、葉縁が僅かに波打つ。
  ケイヌビワ  :Ficus erecta var. beecheyana
  ホソバイヌビワはYListでは品種扱い、ケイヌビワはYListでは変種扱いだが、The Plant Listでは両者ともイヌビワのシノニムとしている。


主写真撮影日:2017-01-21   撮影地:神奈川県葉山町 下二子山
撮影者:MOMO