ビンロウ

学名:Areca catechu  

ビンロウ(檳榔)[別名:ビンロウジュ] ヤシ科ビンロウジュ属

マレー半島原産と推測され、太平洋・アジアおよび東アフリカの一部に生育する常緑高木。

樹高は10-17m、稀に30mに達する。幹は枝を分けず直立し、タケ(竹)のような節が入る。葉は幹の頂に集まり羽状複葉で長さ約1.2m。葉柄の下部が急に太まり鞘状となり幹を包む。雌雄同株。葉脈の基部から箒状に分れる花序を出し、上方に多数の雄花、下方に少数の雌花を付ける。
花期は7-8月。
果実は長さ5-6cmの卵形で一房に150-250個を付け、橙色に熟す。種子は球状で堅く、大理石のような網目状の模様があり、繊維質に富んだ果肉で覆われてる。

※ 名は、中国名の檳榔を音読みしたもの。(似た名のビロウは別種なので注意が必要。)
 種子はビンロウジ(檳榔子)という名の生薬になり、駆虫や胃腸機能改善を目的として用いられる。
 またビンロウジには、アレコリン(arecoline)というアルカロイドが含まれ、タバコのニコチンと同様の作用(興奮・刺激・食欲の抑制など)を引き起こす作用があることから、古来から高級嗜好品として愛用されてきた。未熟のビンロウジを細く切ったもの、あるいはすり潰したものを、キンマ(コショウ科の植物)の葉に包み、少量の石灰と一緒に噛む。しばらく噛んでいると、アルカロイドを含む種子の成分と石灰、唾液の混ざった鮮やかな赤や黄色い汁が口中に溜まる。この赤い唾液は飲み込むと胃を痛める原因になるので吐き出すのが一般的。しばらくすると軽い興奮・酩酊感が得られるが、煙草と同じように慣れてしまうと感覚は鈍る。そして最後にガムのように噛み残った繊維質は吐き出す。台湾では現在、道路にビンロウジを噛んだ唾液を吐き捨てると罰金刑が課せられるため、中心街では路上に吐き出す習慣は無くなった。ビンロウジは、依存性があり、また国際がん研究機関により人に対して発癌性(主に喉頭ガンの危険性)が高まると指摘されている。
 沖縄県では庭園樹として植栽もされている。


主写真撮影日:2017-11-26   撮影地:東京都江東区 夢の島熱帯植物館温室
撮影者:MOMO