イチイ

学名:Taxus cuspidata  

イチイ(一位、櫟)[別名:アララギ、オンコ]イチイ科イチイ属

北海道・本州・四国・九州の、亜高山帯や寒冷地に生育する常緑高木。シラビソ・コメツガ・エゾマツなどの針葉樹と混生する。

樹高は20m、幹径1mになる。樹皮は赤褐色。光沢はなく、縦に浅く裂けて剥がれ落ちる。葉は長さ約2cm、幅約2mmの線形。ふつう螺旋状に付くが、側枝ではやや2列に並ぶ。先端は尖るが、握っても痛くない。雌雄別株、稀に同株。雄花は淡黄色で、9-10個の雄蕊が球状に集まる。雌花は淡緑色、胚珠は1個、数対の鱗片に覆われる。胚珠の基部には環状の仮種皮がある。
花期は4月頃。
種子は長さ5mmほどの卵球形、花の後肥大して杯状になった仮種皮に包まれる。先に種子が熟す頃には、仮種皮は多汁質で紅色になる。種子はふつう仮種皮に埋もれているが、稀に仮種皮から飛び出ているものもある。

※ 古代日本では高官の用いる笏(しゃく)を造るのにこの木が使われた。和名のイチイ(一位)はこれに由来するという説もある。
 寒冷地では、庭木や生け垣に利用される。
 材は赤褐色。緻密なため、建築材や彫刻材に使われる。
 仮種皮は甘く、そのまま食用にしたり、焼酎漬けにして果実酒が作られる。但し種子は有毒。
[近縁種]
  キミノオンコ:Taxus cuspidata f. luteo-baccata 仮種皮が黄色くなる。
  キャラボク :Taxus cuspidata var. nana 常緑低木で高さは0.5-2m、幹は直立せずに斜めに立つ。
         根元から多くの枝が分かれて横に大きく広がる。
         本州の日本海側の秋田県真昼岳~鳥取県伯耆大山の高山など多雪地帯に自生。


主写真撮影日:2015-03-05   撮影地:神奈川県横浜市金沢区 (植栽)
撮影者:MOMO